ENo.234 吠崎 吼音の、False Islandについてのアレコレ。
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二回戦分。
宵闇の中にて戸を隔て、ともしびのあかりと震えるような息遣い。誰が発したか、微かなふるえが空気につたわる。
事件におののき、ふるえるものは、何も力なきものだけではない。その夜は、村の至るところで、同じ光景をみることができた。
悪鬼羅刹の少年は、家の中でひとり、恐怖と葛藤に震えていた。
震えに煽られ、ともしびが小さく揺れる。
「ふたり、消えたんだよな」
静寂にぽつり、言の葉が落とされる。闇の中をわずかにたゆたい、間もなく静寂に呑まれて消える。
ひとりは事の起こりに。ひとりは自分たちの手で。自分が投票される側になったとしたら、きっとなすすべもなく処刑されるだろう。他ならぬ、村人たちの手で。
名前を記述したときの感触は、いまだこの手に残っている。何度思い返しても、実にあっけないものだ。たったその程度の行為が、人の命を奪い去るのだ。
ほんのひとつのことばが、かたちをなしていのちをうばった。
「恐ろしいな、ほんとに」
ため息とともに呟く。ふと見た人々の輪の外に、自分と同じように佇む紅蓮華の姿。
無機質にも思える瞳で海市蜃楼を見る少女が妙に気になり、少年は彼女のもとへと歩み寄った。
「今日で終わりとは、限らないよな」
まるで魔女狩りだ。結露を待つようにゆっくりと、絞り出すようにか細く、少年は形容する。”明日は俺かもしれない”。
彼女の言っていたことは本当なのだろうか。彼女は本当に占い師なのだろうか。
忘却することで何かを得るという行為に、目立たなくてもよいという縛りなどない。もとよりモラルなどとは無縁なのだ、最初に何かを得られさえすれば、あとは尻尾切りで逃げたっていいだろう。
疑おうと思えば、何だって疑うことができる。加害者を言い当てることができる? 占いの結果で出た? 本当に?
(必殺技「ふたしかなことばのさつじんき」)
紅蓮華の少女は、小さな提灯を手に、墓石をじいと見下ろしていた。
紅色の着物が赤く照らされ、鮮血がごとき彩を放つ。
彼岸花の咲き乱れる墓地、その中にひとつだけ、ぽっかりと色の抜け落ちた墓があった。
刻まれた名前は”光合成”。
少女はくちづけんばかりに顔を近づけ、深紅の瞳に墓石を映した。そこにはただ、さまざまな色が混ざり合ったような、色あせた灰色だけがあった。
「 ………… 」
少女は目を伏せ、小さくため息をついた。紅色は墓所よりはがれ落ち、あとにはただただ味気ない色が残る。
ことばのない景色には、季節外れの彼岸花たちが、ひとつの墓石を拒むように咲く姿があった。
占星術の女は、憂鬱をその表情に浮かべながら、前日と同様に水晶球を眺めていた。
時折混ざる嘆息が、脇に置かれた蝋燭の火をゆらめかせる。
――視線を奪われたその姿は、あまりに無防備だ。
静寂を切り裂く音、断たれた声、あふれ出るいのちのしずく。
家々のともしびとともに、からだからあたたかさがきえていく。
事件におののき、ふるえるものは、何も力なきものだけではない。その夜は、村の至るところで、同じ光景をみることができた。
悪鬼羅刹の少年は、家の中でひとり、恐怖と葛藤に震えていた。
震えに煽られ、ともしびが小さく揺れる。
「ふたり、消えたんだよな」
静寂にぽつり、言の葉が落とされる。闇の中をわずかにたゆたい、間もなく静寂に呑まれて消える。
ひとりは事の起こりに。ひとりは自分たちの手で。自分が投票される側になったとしたら、きっとなすすべもなく処刑されるだろう。他ならぬ、村人たちの手で。
名前を記述したときの感触は、いまだこの手に残っている。何度思い返しても、実にあっけないものだ。たったその程度の行為が、人の命を奪い去るのだ。
ほんのひとつのことばが、かたちをなしていのちをうばった。
「恐ろしいな、ほんとに」
ため息とともに呟く。ふと見た人々の輪の外に、自分と同じように佇む紅蓮華の姿。
無機質にも思える瞳で海市蜃楼を見る少女が妙に気になり、少年は彼女のもとへと歩み寄った。
「今日で終わりとは、限らないよな」
まるで魔女狩りだ。結露を待つようにゆっくりと、絞り出すようにか細く、少年は形容する。”明日は俺かもしれない”。
彼女の言っていたことは本当なのだろうか。彼女は本当に占い師なのだろうか。
忘却することで何かを得るという行為に、目立たなくてもよいという縛りなどない。もとよりモラルなどとは無縁なのだ、最初に何かを得られさえすれば、あとは尻尾切りで逃げたっていいだろう。
疑おうと思えば、何だって疑うことができる。加害者を言い当てることができる? 占いの結果で出た? 本当に?
(必殺技「ふたしかなことばのさつじんき」)
紅蓮華の少女は、小さな提灯を手に、墓石をじいと見下ろしていた。
紅色の着物が赤く照らされ、鮮血がごとき彩を放つ。
彼岸花の咲き乱れる墓地、その中にひとつだけ、ぽっかりと色の抜け落ちた墓があった。
刻まれた名前は”光合成”。
少女はくちづけんばかりに顔を近づけ、深紅の瞳に墓石を映した。そこにはただ、さまざまな色が混ざり合ったような、色あせた灰色だけがあった。
「 ………… 」
少女は目を伏せ、小さくため息をついた。紅色は墓所よりはがれ落ち、あとにはただただ味気ない色が残る。
ことばのない景色には、季節外れの彼岸花たちが、ひとつの墓石を拒むように咲く姿があった。
占星術の女は、憂鬱をその表情に浮かべながら、前日と同様に水晶球を眺めていた。
時折混ざる嘆息が、脇に置かれた蝋燭の火をゆらめかせる。
――視線を奪われたその姿は、あまりに無防備だ。
静寂を切り裂く音、断たれた声、あふれ出るいのちのしずく。
家々のともしびとともに、からだからあたたかさがきえていく。
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